特定非営利活動法人
延命治療を希望しない、最期は住み慣れた家が良い。
多くの人が希望するこの二つのことが、どうして実現しないのだろう。
どうして難しいことなのだろう。
その答えは、一人一人がしっかりと「生と死に向き合うこと」と医療の現場の「慣習に疑問を持つ医師が増えること」なのかもしれないと考えさせられた「映画:痛くない死に方」を観ました。
延命治療をどうするか?ということに関しては、ただ漠然と「管に繋がれる延命治療は嫌だ」と思う人が多いけれど、「痛いのは嫌だ」というのは、全ての人が思うことでイメージもしやすいことだと思う。
それでは「痛い」というのは、どういうことか?
イメージとしては、身体のどこかが痛くてのたうちまわるイメージかもしれないけれど、その様子を見ている(看ている)人も痛いし辛い。
亡くなる間際に「こんなことなら◯◯しておけばよかった」と人生を振り返って後悔する人が多いと言われるけれど、それと同じように「生きている間に◯◯してあげればよかった」と後悔する家族は本当に多い。
そして、一番近くで見ていた人にとっては、非常に痛い経験であり、記憶として残ってしまう。
まさしく「本人も家族も痛い最期」がこの映画の前半で描かれていた。
末期癌の父を看病する娘は、父の「最期は家で」という希望をかなえるために、様々な勉強をし、献身的に尽くしていたのに、なぜ「痛い死に方」になってしまったのか。
「最善を尽くして死をまつ」と言い切れるほどに勉強し、腹を括っていた娘の心を打ち砕いたものは何か。
お父さんの苦しむ姿にはグッとくるものがあったけれど、私はそれよりも娘役の坂井真紀さんに自分を重ねて涙が出た。
10年以上前、遠くに住む友人に代わって友人のお母さんの看病をしていた時、家族の都合もあって管に繋がれたそのお母さんの付き添いをしながら、今回の映画と同じ光景を何度もみた。
その光景を、ただ見ているしかない自分が娘役の坂井さんに重なった。
悔しいやら、辛いやら。
辛そうな友人のお母さんのそばで、苦しくても心臓が止まらない、なんとも言えない時間は「痛い時間」以外の何ものでもなかった。
テレビドラマでは、管に繋がれていても動かなくなって、カクッとなったらご臨終ですみたいなシーンばかりだけれど、人が命を閉じる時ってそうじゃない。今回の映画では、その時を鮮明に思い出すほど忠実に表現されていると感じた。
映画前半の涙は、可哀想なんていう感情ではなかった、自分が痛い、辛い、怖い、そんな感情の涙だったと思う。
臨終儀式というと、本来は亡くなってからの流れのことを指すようだけど、今回の映画で描かれていたのは、主人公で研修中の柄本さん演じる在宅医が「なぜ在宅医になったのですか?」と先輩に聞くシーンで使われていた。
聞かれた先輩在宅医は、蘇生のための心臓マッサージではなく「患者の死を認めたくない」ための心臓マッサージのことを思い出し「臨終儀式」と言った。
その言葉に私はハッとして、急いで書き留めた(今回は映画の途中、真っ暗な中で幾度もノートに書き殴っている)。
そう言えば他にも「早く退院させるための遺漏の増設」や「時間通りの痛み止めの投与」など、医師も患者も当たり前だと思っていることが、実はそうなの?と考えるきっかけになる場面がいくつもあった。
私も祖母の介護の際、少し体調を崩して入院した際に「食欲が落ちているので遺漏にした方が」と言われ、それを拒否すると「それでは施設には戻れませんよ」と、家族が困るであろう言葉を突きつけられた。
この時初めて「遺漏なら施設にいられて、最期まで口から食べさせたいと言えば、在宅で診るしかないのか」と気づいた。そんなことになるとは、施設入所の際に誰も教えてくれなかった。
その後色々と調べていくうちに「遺漏が病院の医師の切り札的なもの」になっていることもわかってきたし、在宅医とは他の選択も検討できることを知った。
こう考えると「延命治療をしたくない」という希望は、「あなたのためを思って」と本人の気持ちを受け入れられない家族と、敗北感を味わいたくない医師によって遮られるのだと、映画を観ながら改めて感じた。
生きるとは食べること
延命の 家族愛とは エゴイズム
この言葉の本当の意味を、しっかりと考えていきたい。
最近では「本人の意思が大切」「意思決定の必要性」など、本人の希望について焦点が当てられるようになっている。
エンディングノートも、一歩間違えると周りの人はお構いなしの「わがままノート」が出来上がっていることもあるし、きっちり時間をかけて向き合ったにも関わらず、誰もそのノートの存在を知らないままということもある。
本当の意味で「本人の意思を尊重する」ためには、第一にそばでケアする人が腹を括る必要があると再認識した。
昨年末に義母の在宅看取りをした際に、多少なりとも情報があって、在宅で看取るということがどういうことかわかっていた私でさえ、何度も義母の意思を尊重するべきかどうか悩んだ。
尊重しているのか、見殺しにしているのか、自分だけではわからなくなってしまう。
本当にこれで良いのか?
もっとできることがあるのに、あきらめているのではないのか?
何が自然で、何をすると良いのか?
焦点の合わない義母の顔を見る時、一瞬意識がなくなる義母を見る時、本当にケアする家族が「これで良いのだ」と思えなければ、やはり怖くて救急車を呼びたくなると思う。
救急車 在宅看取り 夢を消す
宇崎竜童さん演じる終末期の男性が書いた川柳(もどき)の一つ。
そうは言っても、いくら腹をくくっていたって医師や医療従事者ではないわけで、素人の家族としてはどう判断したらよいのかわからない。
そんな時、やはりいつでも電話できる、相談できる医師の存在は必要不可欠で、映画の中でも妻役の大谷直子さんも、前述の坂井真紀さんも、思わず電話をするシーンがあった。
この時の電話対応で、大きく流れが変わるシーンについては、実際に観ていただいて考えていただきたい。
私も、信頼できる在宅医と出会えたからこそ、時間をきにしつつもメールをしたり、電話をしたり、時には夜中でもきていただいたりしながら、なんとか救急車を呼ばずに在宅で看取ることができた。
信頼できる在宅医との出会いは、そうそう簡単ではない(先生方申し訳ありません)ので、本気で「最期は家で」と考えているなら、ぜひ早めに調べたり相談したりしてほしい。
今回の映画は、当協会の代表として終活を考える立場としてはもちろん、これまでも、これからも介護が続く一人の家族としても、一人でも多くの人に観ていただきたいと思います。
原作の長尾和宏先生、脚本・監督の高橋伴明氏、演じてくださったキャストのみなさま、制作に関わられた全てのみなさまに感謝いたします。
原作・医療監修:長尾和宏
脚本・監督:高橋伴明
協会では2017年より毎年「看取り」に関する勉強会や講演会をしてまいりましたが、今年は人生会議の日直前に在宅で家族を看取った代表赤川が、「人生会議やってどうだったのか?」という体験談をお伝えします。
長くなるので4回にわけてYouTubeにアップしております。
人生会議は2018年に厚生労働省が愛称募集で決めた、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の愛称です。
11月30日は「人生会議の日」2019年は直前に小藪さんのポスターが物議?をかもして騒いだのですが、今年は厚労省もコロナ対応が大変で?なのか、すごく静かな人生会議の日でした。
しかし、本来はコロナ渦だからこそ考えたい、話して欲しい!と思います。
人生会議その3は、在宅看取り、本人と家族の心の揺れについてです。この辺りが一番気になるところではないか?と思います。
ACPもエンディングノートも実際に実行できるのか?とか、実行してどうだったのか?結果などが見えにくいのでなかなか進まないところもあると思います。
そこで、今回は実際にどうだったかということを、一体験談として公開しております。
協会では2017年より毎年「看取り」に関する勉強会や講演会をしてまいりましたが、今年は人生会議の日直前に在宅で家族を看取った代表赤川が、「人生会議やってどうだったのか?」という体験談をお伝えします。
長くなるので4回にわけてYouTubeにアップしております。
人生会議は2018年に厚生労働省が愛称募集で決めた、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の愛称です。
11月30日は「人生会議の日」2019年は直前に小藪さんのポスターが物議?をかもして騒いだのですが、今年は厚労省もコロナ対応が大変で?なのか、すごく静かな人生会議の日でした。
しかし、本来はコロナ渦だからこそ考えたい、話して欲しい!と思います。
人生会議その2は、クリニック通院から在宅医療への移行、安定期からの急変とその頃の気持ちなどについてです。
人生会議は2018年に厚生労働省が愛称募集で決めた、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の愛称です。
11月30日は「人生会議の日」2019年は直前に小藪さんのポスターが物議?をかもして騒いだのですが、今年は厚労省もコロナ対応が大変で?なのか、すごく静かな人生会議の日でした。
しかし、本来はコロナ渦だからこそ考えたい、話して欲しい!と思います。
協会では2017年より毎年「看取り」に関する勉強会や講演会をしてまいりましたが、今年は人生会議の日直前に在宅で家族を看取った代表赤川が、「人生会議やってどうだったのか?」という体験談をお伝えします。
長くなるので4回にわけてYouTubeにアップしております。
人生会議その1は、義母とACPをやってみることになったきっかけからお話します。
2019年11月30日(土)13時30分〜15時30分「第3回これからの看取りを考える講演会〜人生会議を始めよう!〜」を開催いたします。
会場は広島県福山市ですが、どこからでもWEB参加が可能です。
もう事前登録はお済みですか??
開催まであと3日となり、告知にも力を入れ始めたところ、厚労省のポスターの件で話題沸騰中(??)の人生会議。初めて「人生会議」を聞いた方には「それなに?」と思われている方も多いでしょう。
少しでも興味を持たれたみなさん、ぜひ現場の声を聞いてみませんか?
11月27日には、中国新聞さんのくらし面にご案内記事を掲載していただきました。
また、11月27日19時〜、インターネットテレビ「ネットアイランド」さんに出演させていただきました。
ネットアイランドと言えば・・・
なんと2001年12月からず〜〜〜っと、ネットラジオに始まってインターネット放送草分けの頃から、毎週水曜日の夜放送されている福山発信の全国・全世界への情報発信番組。
今回はその732回に出演して、11月30日の告知を約30分にわたってさせていただきました。
第732回 ネットアイランド
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告知に力を!と思っていたところ、こちらのポスターで#人生会議 がバズったようで・・・
注目されるのは良いことですが、誤解はいけません。
なぜバズったか???なぜニュースになったか???
みなさんの目で確かめてください。
そして、11月30日は「ACP実践者」から、本当の人生会議について聞いてください。
11月30日のその時間は、ネットも見ることができない・・残念だ・・
諦めないでください!
事前のお申し込みと500円の参加費をご入金くださった皆様は、会場の様子を録画し視聴のご案内をさせていただきます。
鋭いツッコミのドキュメンタリー作家 奥野修司さんと、在宅医療専門医でACPを実践されている丸山典良先生の「机上の空論ではない現場の話」を知る、貴重なチャンスです。
お申し込みはこちらのフォームから行なってください。
お支払いは、クレジット決済、ゆうちょ振替、銀行振込からお選びいただけます。
11月30日は、会場で、ネット上で
お待ちしております!
講演会詳細はこちら⇨https://endingnote.or.jp/2019/10/19/2019mitori/
日 時:2019年11月30日(土) 13:30〜15:30
会 場:ものづくり交流館 セミナールームB
福山市西町1-1-1 リム福山7F
参加費:500円(事前のお支払いをお願いします)
定 員:会場 50名、WEB参加 100名(限定)
1.会場参加
福山市ものづくり交流館セミナールームで参加
2.WEB参加
ZOOMウェビナーで開催しますので、インターネット環境がある場所なら、ログインや面倒な登録なしでどこからでも参加できます。
※開催日までの事前申込、事前入金が確認できましたら、当日だけでなく後からでも講演会の録画をご覧いただくことが可能です。
お申し込み時の参加人数分の合計料金を下記のいずれかの方法にてお支払いください。
1.PayPalでお支払い(クレジットカード、銀行振込ができます)
https://www.paypal.com/cgi-bin/webscr?cmd=_s-xclick&hosted_button_id=8QPMCWJFX9PJ6
2.ゆうちょ現金振替
記号 15100
番号 57484351
名前 トクヒ)エンディングノートフキュウキョウカイ
3.銀行口座振り込み
ゆうちょ銀行
店名 五一八(ゴイチハチ)
種目 普通預金
番号 5748435
ご不明な点や、当日までのお問い合わせは、お気軽にメールでご連絡ください。
WEB参加の方には、別途ご案内を差し上げますので、しばらくお待ちください。
メールアドレス info@endingnote.or.jp
第3回となる「看取りを考える講演会」は、2018年に厚労省がACPの愛称募集で決定した「人生会議の日」11月30日(いい看取り・看取られ)に開催します。
これまで本協会では、2017年には「看取りとは?さまざまな立場の経験から〜」と題して3回の連続講演会を開催、2018年には「これからの在宅看取りとは?」と題して開催しました。本協会はエンディングノートの普及に取り組む中で、やはり人生の終末期をどう考えるのか?自分は?家族は?に向き合うことを避けることはできないと考え、「看取り」をテーマに考える機会を持っています。
今年度は、最期まで自分らしく生きることを考える時、自分の意思を周りの人に伝える手段として欠かすことのできない「エンディングノート」の他に、さらに深く考えることのできる「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」について、専門家を交えて一緒に考えていきたいと思います。
アドバンス・ケア・プランニング(以下ACP)とは「人生の最終段階における医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合う取り組み」(厚生労働省ホームページより)と定義されていまあす。ACPを行うことによって延命治療の有無はもちろん、そこに到るまでの様々な過程や、どこで生活したいのか、どのように生活したいのかなど詳細に意思表示をすることで、本人の意思を尊重した終末期を過ごすことに役立ちます。
広島県内では、本協会顧問の丸山典良医師などが在宅医療の現場で積極的に取り組んでおり、福山市医師会では「ACPメイト」の養成も始まっています。
厚生労働省は、2018年8月13日から9月14日にACPの愛称募集をおこない、選考の結果愛称を「人生会議」、11月30日を「人生会議の日」(いい看取り・看取られ)として制定しました。
ACPは
人生の最終段階における医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合う取り組み(厚生労働省ホームページより)
とされており、中でも「本人が家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合う取り組み」を重視しており、まさしく「人生会議」は繰り返し話し合うことをイメージすることができ、本協会でも人生会議の日の周知に力を入れたいと考えています。
これまで2回の講演会では「これからの看取り・在宅看取り」をテーマに、参加者のみなさんと考えてまいりました。本協会では自分の意思を家族や大切な人に伝える手段として、また誰もが最期まで自分らしく生きるためにエンディングノートを普及しておりますが、実際に書いている人はあまり増えていません。
一方ACPにおいても、様々な取り組みが行われていますが、一般の人はもとより医療関係者にも十分に周知されていないのが現状です。
そこで第3回の講演会では、本協会顧問でもあり広島県内を中心にACPの普及にご尽力されている丸山典良先生(まるやまホームクリニック院長)と、同じく本協会顧問でジャーナリストの奥野修司さんにご登壇いただき、ACPとは何か?から、現場での様子や今後の課題などを対談形式でお話しいただきます。
また、本協会より「おくすり手帳から始めるACP&エンディングノート」として、おくすり手帳を活用した「誰でも簡単に始めることのできる終活」をご紹介させていただいます。
今回の講演会は、本会場での参加はもちろんインターネット配信をおこないますので、全国の皆様にもご自宅や仕事場などインターネット環境がある場所ならどこからでも参加可能です。WEB参加の方には、事前に質問事項などをお寄せいただき、当日会場内で質問にお答えいただくなど、視聴だけでなく講演会に参加していただくことができます。
※WEB参加の場合も、下記お申し込みフォームより事前のお申し込み、参加費のご入金が必要です。
この講演会は、医療や看護・介護・リハ職・医療従事者の方はもちろんのこと、終活をお仕事にされている方にもオススメです。
ACPやエンディングノートとはどのようなものか?現場でどのように使われているのか?
専門家の取り組みや、本協会が年間300人以上の方にお伝えしている「誰でも簡単に始めることのできる終活・エンディングノート」とはどのような内容か?ぜひ現場の声をお聞きください。
まるやまホームクリニック院長。20年間の公立みつぎ総合病院勤務中に、緩和ケア病棟(ホスピス)で多くのがん患者
さんと向き合う。いい時間を自宅で過ごしていただくサポートを!と平成22年、福山の『支える医療』の先駆けとして在宅医療に特化したクリニックを開設。広島県福山市医師会副会長。
2019年よりACPを普及啓発する「ACPメイト」の育成においても積極的に取り組んでいる。
特定非営利活動法人エンディングノート普及協会顧問。
ジャーナリスト。1948年大阪府生まれ。立命館大学卒業。2006年、『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で、講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞。『看取り先生の遺言』『魂でもいいから、そばにいて』『丹野智文笑顔で生きる』他、著書多数。
特定非営利活動法人エンディングノート普及協会顧問。
◆当日の内容◆
日 時:2019年11月30日(土) 13:30〜15:30
会 場:ものづくり交流館 セミナールームB
福山市西町1-1-1 リム福山7F
参加費:500円(事前のお支払いをお願いします)
定 員:会場 50名、WEB参加 100名(限定)
主 催:特定非営利活動法人エンディングノート普及協会
2018年1月13日(土)広島県福山市にあるリム福山7階のものづくり交流館セミナールームで「看取り」をテーマとした講演会の3回目を実施いたしました。
この「看取り」をテーマとした講演会は、昨年の11月と12月にも開催しており今回は最終回の3回目。
これまでの2回では「介護現場での看取り」を、社会医療法人社団沼南会管理栄養部リハビリテーション部副部長で理学療法士の 森田 裕治氏のお話と介護福祉士さんを交えたパネルディスカッション、「医療現場での看取り」を福山で先進的に在宅医療専門クリニックとして在宅医療、在宅看取りを牽引しておられる、まるやまホームクリニックの丸山院長のお話と在宅医療専門クリニック看護師、訪問看護師、在宅薬剤師の3人のパネルディスカッションで開催してきました。
最終回となった今回は「家族の立場から」をテーマに、第一部を「看取り先生の遺言」著者奥野修司氏にご講演いただきました。
「看取り先生の遺言」は、終末期のがん患者のために在宅ケアのパイオニアとして2,000人を看取り、自らもがん患者として「看取る側から看取られる側」となった岡部健医師の、亡くなる日までの闘病の様子・遺言を奥野氏が聞き取りながらまとめ上げたものです。
第二部は我々、特定非営利活動法人エンディングノート普及協会のメンバーの初期立ち上げメンバーで、看取りを経験した3名でパネルディスカッションを行いました。
過去2回開催してきた「看取り」というテーマ。今までは「専門家目線」で行ってきましたが、今回は「家族目線」で行い家族側の想いなどを中心に取り上げて開催させていただきました。
第一部の奥野氏の講演では、奥野氏がこれまで様々な看取りの現場や、看取り先生の遺言のインタビューをしてこられた中から、写真を交えてわかりやすくお話ししてくださいました。
その奥野氏の講演の中でキーワードとしてできたのが家族側の「覚悟」と「達成感」でした。
家族側の「覚悟」と「達成感」というお話を聞いた時、私は大事な人が余命宣告を受けた場合のことを考えました。
これから何十年もの間一緒に生活していくことが出来なくなってしまうということ、それは病気が原因として現実に起こってしまい自分が思い描いていた理想のプランよりも本人が亡くなってしまうのだという現実を受け入れる自分自身の「覚悟」、その亡くなるまでにしてあげられることや、してあげられたことへの自分自身の「達成感」、これがあれば家族の気持ちは満足するのだなという解釈をしました。
もう少し具体的に覚悟の部分を私の経験したことから伝えさせていただくと、私の理想としていたといいますかきっとこうだろうなという将来の像というのがありました。
それは、私自身が結婚をして子どもが生まれて、その子どもを自分の父親が抱っこしてくれる、また孫を囲んで孫の誕生日やお正月を一緒に過ごすということが自分の頭の中で当然としてありました。
その頭の中に当然にあった、訪れるであろう像というものが、私の場合は「ガン宣告(のちに余命宣告も受ける)」を医師から突然言われたことにより崩れ去ったのでした。
今の時代、宣告というのは患者本人が望んでいない場合を除き口頭で簡単に、また淡々とした口調で告げられるのだなとその時感じました。
しかしその時の私は、まだ今の医療技術があれば助かるだろうと思っていましたが、時間が経つにつれて父親の場合根治は無理なんだなと実感していきました。
その時に崩れ去ってしまった将来像は捨てて、父親が亡くなるという現実を受け入れました。
その後は、これからは父親とどうやって過ごしていけば良いのかといったことを模索し始めました。それが私にとっては「覚悟を決めた」時期だったと思います。
次に「達成感」についての部分ですが、たしかに「達成感」を家族が感じることができれば、気持ちの部分の負担は減るだろうと私も思います。
私の場合もその「達成感」を亡くなった時には感じていたのですが、ある出来事があり「後悔」へと変わってしまい、今でもそれが残っています。
ある出来事については第二部のディスカッションの内容の中で触れさせていただこうと思っております。
そのような家族側の「覚悟」と「達成感」のことを感じながら、第二部のパネルディスカッションへ入りました。
特定非営利活動法人エンディングノート普及協会の3名がそれぞれに経験した看取りについて、簡単に自己紹介を交えながらパネルディスカッションは始まりました。
私が「看取り」の経験を通して話をさせていただいたことは、祖父の看病(透析から始まり最後は肺がん)から始まり父親の看病(肝臓ガン)との掛け持ちになり、2人が亡くなるまで私がどのように看病してきたかについて話をさせていただきました。
その中で、先ほどの奥野氏の講演でてきたキーワードである「達成感」を感じていたけれども「後悔」に変わって、今でもその後悔の気持ちは自分の中でずっと消えずにあるんですと話しました。
その「達成感」から「後悔」に変わった出来事というのは、父親の病室を片付けている時に起こったのです。
父親がガン宣告を受けてから亡くなるまでの約2年の間は、病室でよく2人で話をする時間ができたので
「行きたい所はないの?」
「食べたいものはないの?」
という質問を父親に対ししていたのですが、いつも父親が言う言葉は、
「別にないなぁ」
という返答ばかりだったのです。
その時私としては「無いんだったらいいかぁ」というぐらいの軽い気持ちでいたために、さらに父親に対して「本当にないの?」「言ってくれていいんだよ」といったような深く聞くことなどもしませんでした。
そんな月日を過ごしているうちに父親との別れがきてしまいました。
父親が亡くなって病室を片付けている時、ベットの裏に付箋が何枚も貼られているのに気づいてそれを全て剥がしてみました。
そうすると、
「車」
「東京」
etc…
といった単語が弱々しい字で書かれてあったのです。
今となってはそれを父親がなんのために書いたのか答えはわかりません。
私としては「自分ができることはしてあげたから良かったな」と思っていたのですが、その付箋の文字を見て
「言い出せない環境だったのかな」
「もっとしっかり話しておけばよかったな」
という「後悔」の気持ちがうまれてしまいました。
そのような出来事があり、何かそういった終末期に関するようなことを話せるキッカケになるものはないだろうか?と思っていた頃「エンディングノート」を発見しました。
このノートを活用して元気な時にしっかりと話をし、万が一の時が起こったときに私のような「後悔」の気持ちになってしまう人を少しでも減らせることができるように。
そのような想いから今の協会の前身の任意団体としてのエンディングノート普及協会を立ち上げ、活動を開始を始めることになりました。
パネルディスカッションの話に戻りますが、それぞれの自己紹介が終わると参加者の方からの質問に答えていく時間になりました。
その中で、
家族としては医療従事者の方々の事をどう思ってるいるのか
ということについて
「大変お世話になってるので申し訳ないな」
「迷惑がかかることはしたくないな」
という気持ちを医療従事者の方に対しては家族はもっていますよ
と私自身は思っていたということはお伝えいたしました。
また家族が望んでいることとしてその時に言えなかったのですが、
「家族としてはできる限り本人と病気になる前の普通の生活を送りたい」
ということを思っているということ。
なにも特別なことを施設の方にお願いしたい、またはするつもりも家族としてはないのです。
生活する環境が家から病院に変わるぐらいで、普段送ってきた生活を送りたいと思っているのが家族側の想いです。
本人がやりたいことを施設や病院でできるかできないか判断していただき、もしできるのであればさせていただく。
ただこれだけでも家族の気持ちは和らぎます。
例えばですが、私が父親の看病をしている中で医師や看護師さんに非常に感謝している出来事がありました。それは父親が
「レオ(飼っているラブラドールレトリバー)に会いたいな」
と言っていたのできっと難しいだろうなと思いながらも、担当してもらっている看護師さんに話をしてみました。
なぜ難しいだろうなと思ったと言いますと、父親がその時は車いすにも乗れないベッドで寝ている状態だったからです。
しかし、担当の看護師さんがその時に、
「病院の夜間と救急の入り口に連れてきてもらったらそこまでベッドで移動しますよ。ぜひ連れてきてください」
と言ってくださったのでした。
レオと父親の対面は、時間にしてだいたい10分もないぐらいだったでしょうか。
それでも、父親がレオと接してるあの笑顔の姿は、今でも忘れられなくらい鮮明に覚えています。
その時にもし連れてくることが難しいとわかったら、写真を撮って見せてあげるといったこともしたでしょうがその「できるのかできないのか」の判断をすぐ伝えていただき、行動に移せたことはとてもよかったなと思っています。
ですから医療従事者の方には
「何か特別なことをしてあげなければ、というような力を入れず、笑顔で毎日接していただくだけで大丈夫です」
「万が一本人の要望を聞いて可能であればやりましょう家族に対して言ってくださいね」
ということを私自身の経験から伝えておきます。
今回「看取り」をテーマとした講演会を開催した中で、本人、家族、医療従事者という、この3方向のそれぞれの意見を聞き、一緒に考え情報を共有できる環境や機会があると、お互いにわからない事などが直接聞けてそれが今後の改善に向けていい方向になっていくのではないかと感じました。
今後も協会として、医療従事者の方、本人、ご家族の方、この三者のトライアングルを「良いトライアングル」になるよう、私たちの協会がHUBとなって機会を作って行きたいと思っております。
「看取り」は、家で家族に囲まれて人生の最期・臨死期を迎えるスタイルから様変わりしてきました。
高度経済成長とともに病院で最期を迎える方が9割以上になっていましたが、最近では自宅で最期を迎える方、施設で最期を迎える方など、様々なケースがあります。
これからの看取りは、今まで以上に様々なケースが予想され、これまで医療機関に頼りきっていた家族や身内も「どのように最期を迎えるのか」を考えなければなりません。
そのような出来事がご自身の起こった時に気軽に相談できる場所であったり、勉強会であったり知識をいれておく必要があると思います。
今回参加できなかった方も次回はぜひ参加してみてください。
※この講演会は公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団の助成事業です。
2017年11月から毎月一回開催させていただいた「看取りとは?〜さまざまな立場の経験から〜」。
本日「これからの看取りと家族」がテーマの第3回を無事終えることができました。
毎回熱心に通ってくださった方、参加した方が声をかけてくださって足を運んでくださった方、多くの方に関心を持っていただけたこと、協会役員一同大変嬉しく思っております。
またお忙しい中、講師としてご登壇くださった先生方、パネラーのみなさま、本当にありがとうございました。
この連続講座は、講師のみなさま、パネラーのみなさま、そして参加してくださったみなさまが「看取り」というテーマを通して「さまざまな立場の経験から」考えていただくことができたのではないでしょうか。
今回のことをスタートとして、これからも勉強会などを開催してまいります。
本日3回目の講師としてご登壇してくださった奥野修司さんより、本日の資料をご提供いただけることになりました。
奥野さんは町田在住で、フリージャーナリストとして著書多数。
ご自身もお父様、お兄様の看取りを経験されていますが、お仕事としては「看取り先生の遺言」を出版されています。
「看取り先生の遺言」は、終末期のがん患者のために在宅
講演の中では、これまでのご経験や取材で出会われた方のお話しはもとより「なぜいい看取りが必要なのか」「希望死、満足死、納得死」「お迎え体験」「家族にとってのいい看取り」など、本当に様々な角度からお話しくださいました。
今回は特別に、奥野さんがまとめられた当日資料を期間限定で公開していただけることになりました。
ご希望の方は、下記フォームに必要事項をご記入いただき送信してください。
送信後に資料ダウンロードのご案内をさせていただきます。
公開期間:2018年1月13日(土)〜20日(土)
※返信メールが届かない場合は、迷惑メールフォルダもご確認ください。
講演会資料ダウンロードフォーム
[contact-form-7 404 "Not Found"]
看取りとは?をテーマに、それぞれの立場から看取りを考える3回シリーズの講演会。
第2回は「医療の立場から」ということで、第1部は在宅医療専門まるやまホームクリニック院長 丸山典良先生のご講演、第2部は在宅医療に関わる専門家のみなさまをパネラーにお迎えしたパネルディスカッションで会を進めます。
日本は超高齢社会となり、迫り来る「多死社会」を前に国もあれこれ対策に乗り出しています。
とはいえ、これまでの自宅で亡くなることが一般出来だった時代から「病院死が7割、8割を超える」という時代に変わり、さて病院だけでは難しいということで「ご自宅で」と言われても簡単なことではありません。
神奈川県横須賀市では、11年度から、在宅医療や在宅みとりに関わる地域の人材育成や多職種連携に力を注ぐ。市民啓発にも力を入れ、在宅療養を紹介する啓発冊子の発行、相談窓口の周知などを行ってきた。全死亡者のうち自宅や高齢者住宅で亡くなる「在宅死」の割合は14年の場合、22・9%と、人口20万人以上の自治体でトップ。川名理恵子・市地域医療推進課長は「1人暮らしでも最期まで自宅で暮らすことは可能だが、制度があっても市民の理解がないと進まない」と話す。(毎日新聞「どう変わる医療と介護」から)
このような自治体の動きはもちろんのこと、実際に終末期を在宅で過ごし、在宅看取りを実現するには市民の理解は欠かせないと言います。
どの自治体や医療機関でも、在宅医療や在宅看取りについて準備は進んでいますが、進まないのは市民の理解や「やはり最期は専門家(病院)にお任せしたい」という、医者頼みの考え方が強いこともあります。
これまで体調の変化や終末期の過ごし方について、全て医療機関に委ねてきた市民にとっては、
など、わからないことが多く不安に思っているのかもしれません。
そこで第2回の講演会では、在宅医療専門クリニックの先生や看護師、訪問看護師、在宅薬剤師など、日々現場に向き合っておられる専門家の皆様に「在宅医療の実際」についてうかがいます。
お話にもなると思いますが、在宅医療専門クリニックの受診を受けると、点滴が必要な場合には自宅でも点滴をうけることができますし、必要に応じてお薬も出していただけます。
がん末期の患者さんであれば、痛みのコントロールは自宅で十分可能になっています。
義弟は末期のがんで、終末期を自宅に戻って過ごしました。
最初は義妹も家族も怖がっていましたが、住み慣れた自宅で義弟も安心し、家族揃って貴重な時間を過ごすことができたようで「在宅にしてよかった」と話してくれました。
実際の状況、どのようなことが行われるのか、家族はどのように寄り添うのか?など、しっかりと知ることから始める。
知ることで、自分んたちはどうしたいのか?自分は?大切な人は?
考えて話し合う、または記録するなど次のステップに進むことができるはずです。
そうは言っても不安、怖い、自分では考えられないという方は、ぜひ会場にきて質問してください。
パネルディスカッションの時間には、様々な疑問を投げかけ、会場のみなさんと考え共有しながら進めます。
直接聞きにくいことも、会場では「みんなの疑問」として聞きますから、安心してご質問ください。
会場では、前回と同じく Nursing roseさんによるメディカルアロマのハンドトリートメントボランティアが行われます。
今回パネラーでもあるNursing rose代表でまるやまホームクリニック看護師の金山さんは、在宅で終末期を過ごされる患者さんや家族の方のために、アロマを活用しておられます。
アロマオイルは適切に使用することで、薬では取りきれない痛みを和らげたり、自律神経を整え不安を取り除いたりできる他、患者さんと家族の方のコミュニケーションを深めるツールとしても活躍します。
会場内もアロマの香りに包まれて、リラックスした状態でお話をきいていただけること間違いなしです。
ぜひ。会場でアロマを体験してください。
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第2回 医療に関わる立場から
日 時:12月16日(土) 13:30~15:40
第1部 講演 13:30~14:30
講師:丸山 典良先生
第2部 パネルディスカッション
14:40~15:40
パネリスト:金山栄美さん、布施川雅子さん、
山根暁子さん
会 場:ものづくり交流館セミナールームB
(リム福山7階)
定 員:50名
参加費:無料
主 催: 特定非営利活動法人エンディングノート普及協会
後 援:福山市、中国新聞備後本社・中国放送・テレビ新
お申込み:こちらに参加表明をお願いいたします
お問合せ:メッセージをお願いいたします
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第3回「これからの看取りと家族」は2018年1月13